
【はじめに】
音楽フェスは、単なる娯楽ではなく、“推し”という感情が経済を動かすリアルな現場だ。そこでは、アーティストを「応援したい」という気持ちが、グッズ、交通、宿泊、衣装、飲食にまで波及する――まさに“推し経済”の縮図である。
【目次】
- フェスが「経済活動」になる瞬間
- “推し”にお金を使うことは「自己表現」
- 観客1人が落とす経済効果とは?
- 地域・企業に波及する“フェス経済圏”
- SNSで加速する「共感消費」
- 「好き」が未来をつくる時代へ
1. フェスが「経済活動」になる瞬間

音楽フェスに行くために、私たちは何をしているか?
・チケット購入(先行抽選などで高倍率)
・フェス用の服を買う(参戦服)
・会場近くに宿泊
・現地での飲食、グッズ購入
・現地までの交通手段を予約
この一連の行動だけでも、何万円単位の経済活動が生まれている。しかも、これは「義務」ではなく、「好きだから」「推したいから」発生する自発的な支出。これが“推し経済”の基本構造だ。
2. “推し”にお金を使うことは「自己表現」

フェス会場で見かける、グループTシャツ、手作りうちわ、手の込んだメイクや髪型――これはすべて、「推しを讃える」ための投資であり、「自分はこのアーティストが好きです」という旗印でもある。
私自身、かつてあるフェスに推しの出演が決まり、急遽グッズで全身を固めて参戦したことがある。「推しのためにお金を使う」という行為は、他者に見せるためであると同時に、自分の気持ちを“可視化”する行為でもあった。
3. 観客1人が落とす経済効果とは?

ex.)あるフェスの1日の観客動員が3万人だった場合…
- チケット代(平均1万円)→ 3億円
- グッズや飲食(1人あたり平均5,000円)→ 1.5億円
- 交通・宿泊(平均1.5万円)→ 4.5億円
◎合計→1日で約9億円以上の経済効果
これは、1つの地方都市の経済を丸ごと動かすレベルのインパクトだ。
4. 地域・企業に波及する“フェス経済圏”

地方フェスの場合、周辺の飲食店や観光施設が特需状態になる。
・駅のコインロッカーがすぐ埋まる
・コンビニがフェス仕様の商品を展開
・地元旅館が即満室
・帰路の交通機関に特別便が出る
フェスは「一過性のイベント」ではなく、その周辺に波紋のように経済の動きを起こす存在だ。
5. SNSで加速する「共感消費」

Z世代やミレニアル世代1にとって、「この体験を誰かと共有する」ことは価値の一部。
・「このフェスに行ってきたよ」と投稿
・推しグッズを見せる“開封動画”
・「参戦服コーデ紹介」投稿
これらが他者の消費意欲を刺激し、同じ行動を生む。SNSを通じて、「体験の連鎖」が新たな経済の波を生んでいるのだ。
6. 「好き」が未来をつくる時代へ

かつて「経済を動かすのは需要と供給」だったが、今は違う。
“推し”という「好き」や「応援したい」という気持ちこそが、価値を生み、売上を生む。そこに価格や効率は関係ない。
これは単なる一過性のトレンドではなく、「感情経済」の時代が始まっているというサインである。
音楽フェスはその象徴的な場であり、“好き”の力が経済を動かしている最前線なのだ。
【まとめ】

音楽フェスは、ただ楽しむ場ではなく、“推し”という感情が生み出す経済の現場。
交通、宿泊、飲食、グッズ――あらゆる産業が、そこに集まる“好き”に支えられている。
この“推し経済”は、感情とお金が結びつく新しい価値の形だ。
未来の経済は、数字だけで語れない。
「誰を、何を応援したいか」――それが、新しい経済の始まりなのだ。
- ミレニアル世代 :1980年代前半から1990年代半ばまでに生まれた人を指す世代呼称のこと。 ↩︎
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